17.国会 17−1 国会の地位       41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。   42条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。   43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。   両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。   51条 両議院の議員は、議院で行なった演説、討論または評決について、院外で責任を問われない。 1.総説   議会に中心的地位を与える根拠   → 選挙が民意を反映し、議会が正当性の根拠を持つに至ったこと 立法が他の国家権力に対し論理的に優越すること ‥規範の定立と執行に分けた場合に立法権は定立の立場にある。 権力分立理論が国民代表機関の主張を強化したこと   国民主権→国民の代表機関→最高機関かつ唯一の立法機関 2.国民の代表機関  (1)代表観 民意の反映の重視→命令委任…代表者は選挙民の意思に法的に拘束されるという考え方。   { 民意の統合の重視→自由委任…代表者は選挙民の意思に法的には拘束されないという考え方。  (2)全国民の代表の意味   *43条の全国民の代表とはいかなる意味か。A    →法的代表:本来的に意思能力を各国民の法定代表機関たる国会の表明する意思が国法上国民の意思と見做されると       いう法的意味である。 c.国民を意思能力を有しない「政治的無能力者」として扱う点で、参政権を初めとする諸権利を保持し、        選挙などの手続きを通じて固有の意思を表明しうる国民主権化の「国民」の理解として不当である。 政治的代表(通説):国民は代表機関を通じて行動し、代表機関は国民意思を反映するものと見做されるという趣     (純粋代表)    旨の政治的な意味である。具体的には 議会を構成する議員は選挙母体の代表ではなく、全   国民の代表であること、 議員は議会において自己の信念に基づいてのみ発言・評決し、選          挙母体の訓令には拘束されないこと(自由委任の原則)を意味する。  r.43条が「全国民を代表する」と規定している趣旨は命令委任の禁止と解される。    51条は国会議員に法的な免責特権を与えている。  c.議員ないし国会はその信ずるところにしたがって全国民のために活動すれば足りるとする     ものであり、エリート的支配の傾向を帯び、国民の意思と議員の意思との間に一致の関係    が存するかどうかを問題としない点でイデオロギー的である。 社会学的代表(芦部):自由委任をもとにした代表ではあるが、国民主権原理に基づく統治制度の下において、 (半代表)       「代表」とは、選挙により表明される国民の多元的な意思、社会の実勢力が国会にできるだ      け忠実に反映されることを意味する。  (3)具体的問題    *議員が党議に拘束され、党の指示にしたがって行動することを強いられるのは43条に反しないか。B     →通説)反しない。    r.必要性−今日の政党は政党自体が全国民の利益を考慮しているという建前があり、従って政党の意見に        従うことはむしろ実質的に全国民の代表として活動することである。よって党議拘束は民意の  反映のためにはむしろ必要である。  許容性−自由委任(43条)が禁止するのはあくまでも法的な責任であり、党議拘束は政治的な責任で        あって自由委任の枠外の問題である。    *比例代表選出の議員が党籍を離脱した場合に、議員資格を失うか。B     →議席喪失説 r.民意の反映の強調。比例選挙は政党を中心とした選挙である。   議席保有説 r.民意の統合(自由委任の原則)の強調。いったん選出された以上は議員はすべて「全国民を代表          する」ものと解すべきである。   芦部説:自発的な党籍変更である場合に限って議席を喪失する。 3.国権の最高機関  *国権の最高機関(41条)の意味をいかに解すべきか。B   →政治的美称説(通説):国会が主権者である国民によって直接選任され、その点で国民に連結しており、しかも立法        権を始め重要な権能を憲法上与えられ、国政の中心的地位を占める機関である、ということ       を強調する政治的美称である。法的意味はない。  r.国会は主権者でも統治権の総覧者でもなく、内閣の解散権と裁判所の違憲立法審査権によっ    て抑制されている。    統括機関説:国会が国権を統括する機関であることを意味する。 r.国家法人説を前提に最高の意思決定機関が戦前は天皇であったものが新憲法のもとでは国会になった          という発想。c.司法権の独立や権力分立の理念に反する。    最高責任地位説(佐藤幸):法的な意味で、 国家諸機関の権能及び相互関係を解釈する際の解釈準則となり、また      権限所属が不明確な場合には国会にあると推定すべき根拠となる。    c.法的意味があるという実益は少ない。( は法的意味がないといっても導き出せるし、   はなぜ国会に権限があることが導かれるのか根拠がはっきりしない。また、政治的        美称説に立っても43条から導き出すことができる。) 4.唯一の立法機関  (1)立法   1)立法の意味    *41条にいう「立法」は形式的意味の立法か、実質的意味の立法か。A     →形式的意味の立法説:国法の一形式である「法律」(国会が制定する法規範)の定立を意味する。   実質的意味の立法説(通説):実質的意味の立法を意味する。   r.形式的意味の立法と解すると、41条は同語反復か、せいぜい国会以外の機関が「法律」の形式で法規        範を定立することを禁ずるだけのことになってしまい、憲法上の権限帰属の解釈としては妥当でない。    *実質的意味の立法の中身をいかに解すべきか。A     →狭義の法規説(明治憲法下):「国民の権利・自由を直接に制限し、義務を課する法規範」を意味する。   一般的・抽象的法規範説(通説):一般的(不特定多数の人に適用されるような規範)・抽象的(不特定多数の事          件に適用されるような規範)法規範を意味する。 r.民主主義の進展とともに議会の権力が強くなり、その手続きも民主化された議会が立法権を行使する          憲法制度のもとでは、「実質的意味の立法」の中身も広く解すべきである。   2)具体的論点    *権利を付与することは立法事項か。褒章条例を制令で定めることができるかが問題となる。B     →法規説‥国民の権利を制限するものではなく、立法による必要はない。   一般的・抽象的法規範説‥権利を与えるものも、法律で規定するべきである。    *行政各部の組織は立法事項か。A     →法規説‥行政内部の問題は国民の権利を制限するものではなく、法律で定める必要はない。   一般的・抽象的法規範説‥行政内部の問題もすべて国民に関係するという意味で一般性、抽象性を有し、法律で規        定するべきである。    *個別具体的な事件について処分的法律ないし措置法と呼ばれる法律を制定することは合憲か。A     →原則合憲説(芦部):合憲性は 権力分立原理・ 平等原則との関係で問題となる。しかし、 権力分立の核心が           おかされ議会・政府の憲法上の関係が決定的に破壊されるような場合を除いて、ただちに権     力分立違反と断ずることはできない。             社会国家の理念のもと平等原則とも必ずしも矛盾するものではない。よって原則として合憲である。   r. 現代国家における立法と行政の分立は、一般的・抽象的な法規範の定立と個別的な具体的な行政行為       という役割分担の間に中間形式が存在する、議院内閣制の確立によって少なくとも議会と政府の関係     に権力分立原理は決定的意味を持たなくなっている、という変容が生じている。  平等原則においても、社会国家においては具体的事実の際に応ずる実質的・合理的差別が要請されるの        で、個別的・具体的法律を直ちに否定する根拠にはならない。 原則違憲説(佐藤幸):法律は一般的法規でなければならないという趣旨は立法専制に対する防壁を設けようとし     た点にあり、その趣旨はここでも妥当する。よって処分的法律は許されない。     r.今日、人権の狙い撃ち的侵害に対して法律の一般性が果たす役割を無視してよい状況ではない。95条は 個別的法律の存在を前提としているようにも見えるが、他方で、地方自治を守る趣旨から特に住民投票を       要求して個別的法律に対して著しく防御的姿勢を示しているとも見うる。  (2)唯一   1)国会中心立法の原則    意義…国会による立法以外の実質的意味の立法は、憲法の特別の定めがある場合を除いて許されない。    例外… 議院の規則制定権に基づく議院規則    裁判所の規則制定権に基づく裁判所規則    行政部の制定する命令 委任命令と執行命令に限定するため例外と捉える必要はない。    地方公共団体の条例    委任命令    *委任立法は国会中心立法の原則に反しないか。A →通説)個別・具体的な委任であれば、反しない。    r.必要性−社会福祉においては国家の任務が増大し、専門的・技術的事項に関する立法や、事情の変化に          即応して機敏に適応することを要する事項に関する立法の要求が増加する。また、地方的な特  殊事情に関する立法や、政治の力が大きく働く国会が全面的に処理するのに不適切な、客観的         公正の特に望まれる立法の必要が増加した。そのことから法律事項を命令や規則などの下位法  規範に委任することは必要である。  許容性−73条6号但書は、委任立法の存在を前提としている。    *授権法に何を定めることが必要か。A →通説)「目的」と受任者のよるべき「基準」を定めることが必要である。    r.41条・31条との関係で一般的・包括的な白紙委任は禁止され、個別的・具体的な委任のみ許される。    *罰則を委任することはできるか。A →通説)特に厳格性を要求した上で、認める。    r.73条6号但書で罰則への委任を認めているので委任自体は認められる。但し、犯罪構成要件について        は立法目的と概括的構成要件が、刑を定める法規についてはその原則が、罪刑法定主義の原則から法律     で定められなければならない。    *再委任は許されるか。B →通説)法律に明文の規定がない場合にも、やむを得ない合理的理由があり、受任者の実質 的な裁量の余地が厳しく限定されていれば、制令が受任事項を府令・省令に再委任することは許される。    *規則への委任は許されるか。公務員の政治活動に関する国家公務員法102条1項と人事院規則14-7は合憲か。B →合憲説(判例)r.規則で定めることができる政治的行為は、国家公務員法102条1項に例示的に定められた程度        に限定されており、しかも受任機関である人事院は独立行政機関であり通常の行政官庁より   も信頼度が高い。  違憲説(通説)r.特に精神的自由を制限する場合の立法の委任の基準は明確であり厳格でなければならないが、   国家公務員法102条1項のような委任立法は包括的に過ぎる。   2)単独立法の原則    意義…国会による立法は、国会以外の機関の参与を必要としないで成立する。    例外…地方自治特別法の住民投票(95条)    *内閣の法律案提出権は認められるか。国会単独立法の原則に反しないかが問題となる。B+ →通説)反しない。    r.許容性−国会は自由に修正し否決もできるので、法律案提出は準備的行為に過ぎない。  72条の議案提出権の「議案」の中に法律案も含まれる。  必要性−議院内閣制の建前から言って、内閣にも法律案提出権を認めるのが妥当である。    *最高裁判所の法律案提出権は認められるか。国会単独立法の原則に反しないか。A →通説)反する。    r.裁判所は、本来的に受動的な機関であり、そのためには裁判官の職権行使の独立と司法府の独立が不可        欠であるから、最高裁判所が立法に関わるのは規則に限られるべきである。  内閣の場合のように議院内閣制の要請という必要性がない。    *立法に国民が関与することは認められるか。国民発案制の肯否。 → 肯定説 r.国民主権の権力的契機の重視、国会の決議の自由を侵害しないと考える。  {否定説 r.国民主権の正当性契機の重視、国民の立案能力の限界を強調する。 17−2 国会の組織と活動     1.二院制  (1)二院制の存在理由    議会の専制の防止‥権力分立  下院と政府との衝突の緩和 下院の軽率な行為・過誤の回避    民意の忠実な反映  (2)両院の組織上の差異    衆議院      参議院 任期 4年(解散の場合は任期満了前に終了)(45) 6年(解散による終了なし)(46) 議員定数 500人(小選挙区300人・比例代表区200人) 252人(選挙区152人・比例代表区100人) 議員資格 満25歳以上    満30歳以上 選挙区 小選挙区と比例代表区(11ブロック) 都道府県を選挙区とする大選挙区と比例代表区   (3)両院の関係   第59条  法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。    衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で     再び可決したときは、法律となる。    前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。    参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないと        きは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。   第60条  予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。    予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会        を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期     間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。   第61条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。    衆議院の優越    衆議院が優越するもの 両院が対等なもの 憲法上 権限事項での優越  議決で優越    予算先議権(60 )   法律案の議決(59) 皇室財産授受の議決(8)    内閣不信任決議(69)  予算の議決(60 )    予備費の支出承諾(87 )     条約承認の議決(61) 決算の審査(90 )     内閣総理大臣の指名(67) 憲法改正の発議(96 ) 法律上  国会の臨時会・特別会の会期の決定、国会の会期の延長  国会と休会の議決    検査官の任命の同意 衆議院の先議権 参議院が議決しない場合       再議決  両院協議会 法律案(59) なし     60日 否決とみなすことができる。 必要 任意的 予算案(60) あり     30日 衆議院の議決        不要    必要的 条約(61) なし     30日 衆議院の議決        不要    必要的 内閣総理大臣の指名(67) なし    10日 衆議院の議決        不要    必要的 2.選挙  (1)選挙制度   二大政党化が可能か。 死票  民意の反映    小選挙区   ○政局の安定 死票が多い    ×    大選挙区   △ 死票が少ない   △    比例代表区  ×小党分立による政局不安定 △  ○  (2)投票の方法    単記投票法…一選挙区から選出する議員定数の多少にかかわらず投票用紙に一人の候補者の指名を記載する方法    連記投票法…一選挙区から二人以上の議員を選出する大選挙区に於て投票用紙に二人以上の候補者名を記載する方法 完全連記制…選挙区の議員定数と同数の候補者名を記載させる方法 制限連記制…議員定数より少ない候補者名を記載させる方法    累積投票法…選挙区の議員定数と同数の投票権の行使を選挙人に認め、その際、選挙人は必ずしも別々の候補者に投       ずる必要はなく、同一人に重ねて投票することができる方法     (3)代表の方法    多数代表制…選挙区の投票者の多数派から議員を選出させようとするもの→小選挙区制・大選挙区完全連記制    少数代表制…選挙区の投票者の少数派からの議員の選出を可能とするもの→大選挙区制単記制・制限連記制・累積制    比例代表制…選挙区の多数派と少数派に、その得票数に比例した数に議席を与えようとするもの 3.政党  (1)意義…一定の政策作を掲げ、それに対する国民の支持を背景に政府機構の支配の獲得・維持を通じてその実現を図ろう      とする自主的・恒常的な政治組織団体    役割‥議会制民主主義の下で民意を反映させ、議会における意思の統合を図るという役割。   →私的な団体という側面と公的な役割を果たすという側面の二面性  (2)憲法と政党の関係    敵視→ 無視→ 承認・合法化→ 憲法的編入 (トリーベル)    日本国憲法‥「結社」として保障する。直接の規定はない。  (3)政党に関する諸問題   *憲法秩序に反する政党。民主主義を真向から否定する政党の禁止立法は許されるか。D    →できない。r.政党の目的それ自体を理由に解散等の規制措置を講ずることは、思想良心の自由に反する。    自由主義的民主主義に反する。憲法のとる徹底した価値相対主義に反する。時の政権保持者による      恣意的適用の危険が大きい。   *政党と政教分離原則。宗教政党は政教分離に反し許されるか。→許される。   *政党についての司法権の限界。 4.国会の活動  (1)会期   第52条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。   第53条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれ       ば、内閣は、その召集を決定しなければならない。    意義…一定の期間を限って国会に活動能力を与える制度  常会…毎年1回定期に召集される会(52)  臨時会…臨時の必要に応じて招集される会(53)  特別会…衆議院が解散され総選挙が行なわれた後に、召集される会    会期不継続の原則     原則)各会期は独立して活動するのが建前で、会期中に議決されなかった案件は後会に継続しない。(国会法68条)     国会法上の原則であって憲法上の原則ではない(通説)。    一事不再議の原則     …同一問題について同じ会期中に再び審議しないという原則。会議の能率低下を防ぐための原則。(規定なし)  (2)緊急集会    第54条  衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日         以内に、国会を召集しなければならない。      衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、        参議院の緊急集会を求めることができる。      前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後10日以内に、衆議院        の同意がない場合には、その効力を失ふ。  (3)審議と議決   1)定足数      第56条  両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。    *「総議員」の意味。C →法定議員数説(通判)r.3分の1という低い数に定められているものを更に緩めるような解釈は望ましくない。  現在議員数説 c.定足数が常に変動することとなり一定の時点でその各定数を捉えることが困難になる。   2)表決数    第56条  両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数の         ときは、議長の決するところによる。      例外) 出席議員の3分の2以上とするもの 議員の資格争訟裁判(55)  秘密会(57 )  議員の除名(58 ) 法律案の衆議院での再可決(59 )    総議員の3分の2以上とするもの 憲法改正の発議(96 )    *「出席議員」の意味。棄権者、白票、無効票が算入されるか。C →肯定説(通判)r.棄権等は一定の意思表示であり、欠席者と同様に扱うことは妥当でない。56条2項は「      投票」の過半数とは言っていない。  否定説 r.算入されるとすれば棄権者等を全て反対の表決をしたものと同じに扱うことになる。   3)公開    第57条  両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くこと        ができる。      両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、      これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない 。     出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。    例外)委員会、両院協議会(公開禁止) 17−3 国会議員の特権     1.不逮捕特権   50条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その       議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない  (1)意義   原則)国会議員は会期中逮捕されない。会期前に逮捕された場合でも議院の要求で釈放される。   例外) 院外における現行犯の場合は逮捕される(国会法33条)   その院の許諾があった場合は逮捕される(国会法33条)  (2)不逮捕特権の目的   *不逮捕特権の目的をいかに解すべきか。A    →議員の身体的自由保障説:政府の権力により議員の職務遂行が妨げられないよう身体的自由を保障するという目的。 議院の活動保障説:議院の正常な活動の保障という目的。 折衷説(通説):逮捕権の濫用から議員の自由な活動を保障し、もって議院の自主性を確保するという目的。   *逮捕の請求に対する議員の逮捕許諾の判断基準はいかに解すべきか。B    →議員の身体的自由保障説‥逮捕の理由が正当であるか否かのみで判断する。 議院の活動保障説‥議院の審議・運営の必要性を考慮して判断する。   *逮捕は許諾するがそれを一定の期間に制限するという、期限・条件付き許諾が認められるか。B    →否定説(議員の身体的自由保障説とつながりやすい)  r.議員が逮捕請求に対して許諾を与える以上、その後の措置は全て検察庁・裁判所の判断に委ねるべきである。   肯定説(議院の活動保障説とつながりやすい) 2.免責特権   51条 両議院の議員は、議院で行なった演説、討論または表決について、院外で責任を問われない。   *免責の対象となる行為は何か。B−    →限定説:51条にいう議院で行なった演説、討論または表決に限定される。 拡張説(通説):職務遂行に付随する行為(委員会、地方公聴会等)をも当然に含む。 r.議員の活動の自由を最大限に保障するという免責特権の趣旨を尊重すべきである。   *責任の意味。所属政党・支持団体・選挙民等が、議院において議員が行なった発言・表決について、政治的道義的責    任を追及することはできるか。 B−    →できる。r.国会議員が院外で問われない責任とは、一般国民ならば負うべき法的責任のことである。   *国民の名誉・プライバシーを侵害する発言についても、免責されるか。B    →佐藤幸)免責特権は議院における自由な発言などを確保することが結局国民全体にとって利益になるという見地か      ら政策的に議院に認められた特権であり、その保障は絶対的ではない。人権尊重主義の見地から少なくと    も国家賠償法1条1項の国家賠償を認めるべきである。 3.歳費受領権   49条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。       法律によって減額されうる。 17−4 国会の権能     1.概説   憲法改正の発議権(96条) 法律の議決権(59条) 内閣総理大臣の指名権(67条)   弾劾裁判所の設置権(64条) 財政監督権(83条) 条約承認権(61条) 2.外交統制  (1)総説    政府の外交政策を国会が統制する手段 民主的統制    … 条約承認権(61条・73条3号但書)  国政調査権(62条)  国務大臣の答弁または説明のための出席(63条)  国会の決議(ex.不戦決議)  (2)条約の意義    条約…文書による国家間の合意   *条約の国内法的効力は認められるか。98条の列挙事由から「条約」が除外されていることから問題となる。    →通説)条約は、公布されることにより国内法としての効力を持つ。    r.憲法は、条約を誠実に遵守することを定め(98条2項)、法律や政令と同じように、天皇によって公         布されるべきものとしており(7条1項)、条約は国法の一形式として認められている。   *条約と法律とではどちらが形式的効力が勝るか。B    →通説)条約が法律に優位する。    r.条約は国際的な取決めであり、条約の締結に国会の承認を必要とし、条約の誠実な遵守を求めている。  (3)国会の条約承認権   *事前に国会の承認を得られなかった場合は不成立であるが、事後に承認が求められ、不承認の場合、条約の効力はど    うなるのか。A    *国内法上の効力→通説)無効。r.対外的関係は考える必要がなく、民主的コントロールを及ぼすべきである。    *国際法上の効力 →有効説 r.条約を締結するに際して相手方が国内法上の手続きの遵守の有無を判断することは困難であり、国     内法上の瑕疵は国際法上の効力に影響がないとしないと、国際法の安定性が害される。     無効説(通説)r.条約に国会の承認を要することは憲法上明記されているので、相手国も当然承知すべきこと        であるし、今日の民主国家には共通した要件であり承知しうる。  条件付無効説(芦部):国会の承認権の規定の意味が諸外国にも「周知」の要件とされる場合には無効である。   *国会に条約修正権が認められるか。A    →否定説:修正を加えた場合は不承認を意味する。実際上の効果としては国会の修正決議に従った内容の条約の締結      を内閣に促すということになる。r.国会が内容を修正することは内閣の条約締結権を侵害する。 肯定説:条約に修正を加えることも許される。もっとも条約は相手国との合意によって成立するものであるから、      国会の修正といっても、内閣を一応義務づけるにとどまる。 r.条約締結行為に対する国会の関与の程度の強化。 2.弾劾裁判所の設置   第64条  国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。    弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。 17−5 議院の権能     1.議院自律権   第55条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分       の2以上の多数による議決を必要とする。   第58条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。   両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員     を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要と     する。  (1)意義…各議院が内閣・裁判所など他の国家機関や他の議院から監督や干渉を受けることなく、その内部組織及び運営等        に関し自主的に決定できる権能。    内部組織に関する自律権 議員の釈放要求権(50) 資格争訟の裁判権(55) 役員選任権(58 )    運営に関する自律権  議院規則制定権(58 ) 議員懲罰権(58 )  (2)法律と議院規則の優先関係    *国会法と規則が矛盾・抵触した場合の効力関係。A     →法律優位説(通説):国会法の効力が議院規則に優位する。   r.国会法の成立には両議院の議決を必要とするのに対し、議院規則の制定の場合には一院の議決で足りる。   議院規則優位説(有力説):議院規則の効力が国会法に優位する。本来議院規則で定めるべき事項で特に国会法で        制定された事項については、両議院の「紳士協定」以上の意味はない。   r.参議院規則に反する国会法については参議院が反対しても衆議院による3分の2の再議決で成立してしま      うという点で妥当でない。  (3)懲罰権    *58条2項「院内の秩序」における「院内」の意味は何か。B−     →議場外の行為でも、会議の運営に関連し、または議員として行なった行為で、議院の品位を傷つけ、院内の秩序を      乱したものは懲罰の対象となる。r.自律権を重視する。 2.国政調査権   62条 両議院は各々国政に関する調査を行ない、これに関して証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求できる。  (1)意義…国政に関する情報を把握するという機能、国民に対する情報提供、国民の知る権利に応えるという要請。  (2)法的性質    *国政調査権の性質とは何か。A     →補助的権能説(通説):国政調査権は議員に与えられた憲法の権限を適切に行使するために必要なものとして認め      られた補助的権能であるとする。政治的美称説から主張される。   r.国会を統括機関と見る説は正当でない。このように解してもそもそも国会の権能は国政         全般に渡るので不都合はない。   独立権能説:国政調査権は国権を統括するための手段としての独立の権能である。統括機関説から主張される。  (3)調査権の範囲と限界   1)司法権との関係    *司法権との関係で国政調査権はどのような限界があるか。A →通判) 裁判内容の当否を調査することは司法権の独立(76条3項)を脅かすものとして許されない。  現に継続中の裁判事件に付き、裁判官の訴訟指揮・裁判手続を対象として行なう調査も禁止される。   確定判決に関し、裁判所の法律解釈、裁判の運営等を適法な立法目的を以て行なう調査   判決確定の前後を問わず、裁判事件の事実を議院が裁判所と異なる目的(政治責任追求等)を以て行      なう調査は可能。    r.司法権の独立という自由主義的な要請と国政調査権という民主主義的な要請の衝突の場面であり、自由が目      的で民主はそのための手段であるという考え方からすると司法権の独立が優先する。但し、司法権の独立を       事実上においても侵す恐れのない場合は許される。   2)行政権との関係    *一般行政権との関係。B →通説)国会は行政権に関する国政調査権を全面的に有する。    r.議院内閣制のもと内閣は行政権の行使について国会に対し責任を負う立場にある。    *検察権との関係。B →通判)司法権の独立に準じた配慮が必要であり、国政調査にも限界がある。  提訴・不起訴に関する検察庁の判断に政治的圧迫を加えることを目的とする調査  提訴事件に直接関連する捜査や公訴追行の内容を対象とする調査  捜査の続行に重大な障害をきたす方法による調査    は許されない。    *法律により守秘義務が課されている公務員の「職務上の秘密」に関する調査が認められるか。B →通説)国家の重大な利益に悪影響を及ぼすものに限定的に解釈するべきである。   3)人権との関係    *人権との関係。B →通説)基本的人権を侵害するような調査は許されない。また刑事手続上の強制力は認められない。    r.基本的人権尊重主義から当然である。また国政調査権は刑事手続ではない。    *いかなる事項について調査するかについて、司法審査の対象となるか。 →通説)議院の判断に重大かつ明白な過誤を発見しない限り独自の価値判断に基づく異論を挟むことは許されない。    r.国政調査権の自律性を重視する。